企画展「異国の窓から」~世界を旅する言の葉たち~
宮本輝の小説は、日本国内のみならず、多くの言語に翻訳されて、海外の人々にも読まれています。例えば「錦繡」。英語、中国語(簡体字、繁体字)はもちろん、フランス語、ロシア語、韓国語、スペイン語から、ルーマニア語、ヘブライ語、ヴェトナム語にまで訳されています。なぜこれほども多くの国の人々を惹きつけるのでしょうか。
作品の舞台となった国の人々が、自らの住む場所の魅力について再認識するに至ったこともその要因の一つでしょう。作品には、アジアやヨーロッパ各国、アメリカ合衆国などの、さほど有名でない街や地域まで登場します。
しかし、やはり世界中の人々に共通する魅力の存在が想定されます。それは、宮本輝文学における温かな魂の交感によるストーリー展開です。
人と人とが偶然出会うところから、あらゆる物語は動き始めます。これはどの国でも同じです。時に切なく、時に哀しく、また時に感動的な人間模様を描く宮本輝の文学は、人間を中心とする物語の王道を行くといえます。
さらにそれらの物語の多くにおいて、作中人物たちが人種や国境を越えて交流します。読者はそのためよけいに、劇的な人間関係の魅力を再認識します。
まずはここで、宮本輝文学に描かれる世界の国々に、仮想旅行を試みてください。そしていずれは旅行や留学という形で、訪問を実現してください。この企画展が、そのきっかけとなればと思います。
- ●海外を舞台にした作品(一部)
- 「ドナウの旅人」
- 「ここに地終わり海始まる」
- 「草原の椅子」
- 「星宿海への道」
- 「草花たちの静かな誓い」
- 他