企画展「宮本輝の今」
小説は、通常、作家の書斎で生み出されます。書斎とは、作家の思考の場であり、執筆のための資料と向き合う場であり、創作の場でもあります。
今、この瞬間、作家宮本輝は、どこでどのようにすごしているのでしょうか。伊丹市にある自宅の書斎で、机に向かっているのでしょうか。もしそうなら、何を思い、何を書いているのでしょうか。
このようなことを想像できるのは、実は幸福なことかもしれません。なぜなら、このような想像が可能であるためには、その作家が、とにかく、小説執筆の現役であり、なおかつ、フロントランナーでなければならないからです。
1947年生まれの宮本輝は、60代後半の今、連載小説を三つも抱えています。これまでにない仕事量です。これは、体力的にもかなり「しんどい」ことと思われます。
しかし、宮本輝は、あるインタビューに答えて、「作家が一番脂が乗るのは70代だと思っています。」と述べています。これからの活躍がますます期待されます。
美味しい料理をたくさん小説の中に描く宮本輝にあやかって言うならば、料理としての彼の小説は、シェフがベテランになり、かなり熟したものになってきました。旨みもどんどん増しています。
70代直前の宮本輝の「今」を、どうぞこの企画展でじっくり味わってみてください。