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企画展「宮本輝 ことばのレストラン」

企画展「宮本輝 ことばのレストラン」

 宮本輝の小説の中には、時に、実に美味しそうな料理が登場します。「花の降る午後」に登場するフランス料理店「アヴィニョン」のマダムである甲斐典子は、夜食として「フォアグラとうずらのパイ皮包み」を食べています。「骸骨ビルの庭」に描かれる「みなと食堂」の湊比呂子は、「鯖の味噌煮」や「牡蠣のしぐれ煮」、「地鶏の手羽先の燻製」や「豚肉のポトフ」などを店で出しています。どれも涎が出そうなものばかりです。
 これらはすべて言葉で表現された料理で、当たり前ですが実際に口にすることはできません。読者はただ想像するだけです。にもかかわらず読者がもしそれを美味しそうに思ったとするならば、それは、読者に、そこにないものをあると感じさせる言葉の魔法に他なりません。極端な話をすれば、本当は存在しない料理でも、小説ならば描くことは可能なのです。
 小説家はその意味で、言葉を使って料理を作り出すシェフと呼べます。宮本輝は、美味しそうな料理を提供する第一級のシェフです。
 では、宮本輝が作る料理たちを存分にご賞味ください。きっと宮本輝の小説のもう一つの魅力に気づくでしょう。言葉だけでできた芸術である小説は、ストーリーを読むだけではもったいないものなのです。じっくり想像しなければ小説を読む真の喜びは得られません。
 ようこそ、宮本輝の「ことばのレストラン」へ。

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